MainStage3のAutoSamplerを使用してハード音源を全自動サンプリング。Logic Pro Xでも使用できるEXS24ライブラリを作成します。
目次
ハード音源の録音は面倒
DTM業界にソフト音源が台頭してきてもう久しいですね。100%ソフト音源で音楽を作られている方も多いことと思います。
僕はというと、ソフト音源では手に入らないサンプルだとか、ハードシンセ独特の豊かな倍音感やあたたかみ等を得るためにハード音源由来の音を使うことがたまにあります。
しかし、面倒なのがハード音源は打ち込みの後に録音をしないといけないのです。また、後から音符を変更しようと思っても再度録音しないといけないので、どうしてもウォーターフォール型の作業を強いられてしまいます。
この問題を解消するために音色をサンプリングしてEXS24などのソフトサンプラーで使えるライブラリにしてしまうという手段があります。
AutoSampler
以前、上記の記事でレイヤー音色のサンプリング手順を紹介しました。
ほぼ同じ手順でハード音源もサンプリングできるのですが、わざわざサンプリング用MIDIを作ったりとか煩雑な手順で面倒ですよね。また、シングルレイヤーでしかサンプリングできないのでベロシティによって音色変化のある音は違和感が出てしまいます。
なんとこの問題を解消してしまう、全自動でマルチレイヤーサンプリングしてしまうプラグインがあります。MainStage3に付属しているAutoSamplerというプラグインです。
MainStage3とはライブ等でソフト音源を演奏したいときなどに使用するソフトですが、¥3,600と安価なのでAutoSamplerのために購入してもいいと思います。
MainStage 3
カテゴリ: ミュージック
価格: ¥3,600
ちなみに、AutoSamplerは以前はRedmaticaという会社の製品でしたが2012年にAppleに買収されました。その後、MainStage3がリリースされたときにこっそりと付属プラグインとして復活したようです。
Appleがイタリアの音楽ソフトウェアメーカー Redmaticaを買収?
以前はKONTAKT等のEXS24以外のライブラリでも保存できたようです。Alchemyの件もそうでしたが、中小ソフトウェア企業を買収して自社製品でしか使用できなくするのはえげつないですね。僕はMacかつLogicユーザーなので嬉しいですが…。
自動サンプリングしてみる
実際にAutoSamplerを使用して全自動サンプリングをしてみます。
1.ハード音源の準備
まずサンプリングする音色を用意しないといけませんね。
ちょうどINTEGRA-7に収録されている「Bell 20」というベル音色が楽曲中で使えそうな音だったのでサンプリングしてみたいと思います。
こういう音です。綺麗。
リバーブやディレイがかかっているため、このままだと残響までサンプリングしてしまっておかしなことになります。リバーブとディレイはメニューからOFFにして素の音だけにします。
準備ができたらハード音源の出力をオーディオインターフェースの入力に接続します。
2.MainStage3の起動
まずMainStage3を起動して、新規のコンサートを立ち上げます。
今回は主に右側のチャンネルストリップを使用します。Logicのミキサーとだいたい一緒なので慣れてる方は使いやすいですね。
デフォルトのチャンネルストリップがごちゃごちゃしてたら画面左のパッチリストから新しいパッチを作成するといいです。
3.チャンネルストリップ作成
右上の+ボタンを押して、新しいチャンネルストリップを追加します。
新規チャンネルストリップの設定画面が出てきますので、次のように設定します。
タイプ:外部音源
MIDI入力:普段使っているMIDIキーボード等でOKです。(なしだとサンプリングできないみたい?)
MIDI出力:サンプリングしたいハード音源のMIDI入力に接続したポートです。今回はINTEGRA-7のUSB-MIDIで。
MIDIチャンネル:ハード音源のサンプリングしたいチャンネルです。
フォーマット:あえてモノラルでサンプリングしたい場合以外はステレオでいいと思います。
入力:ハード音源を接続したオーディオインターフェースの入力。
出力:MainでOKです。
作成したら、MIDIキーボードを弾いてみて音が出るか確認しましょう。
3.AutoSamplerの起動
作成したチャンネルストリップのAudio FXをクリック、「Utility」→「Auto Sampler」→「ステレオ」を選択。
AutoSamplerが起動します。
上部の鍵盤をクリックすると音が出ます。
下部のメーターでボリュームが確認できます。
4.AutoSamplerの設定
設定はサンプリングする素材によって調整しなければなりません。
サンプリング範囲
Range StartとRange Endでサンプリングする範囲を指定します。
今回の音色はC2〜B7まで音が出せましたが、高すぎる音と低すぎる音は実用的ではないため、容量のことを考えてC1〜C6にしました。
サンプリング範囲は鍵盤の色が明るくなります。
また、上部のハンドルの長さを変えることでもサンプリング範囲の設定ができます。
サンプリング間隔
Sample Everyでサンプリング間隔を指定します。
「何音ごとにサンプリングするか」という設定です。
鍵盤の青い部分がサンプリングされる音で、それ以外はピッチ変更で補完されるという仕組みです。当然、ピッチ変更すると音質は劣化するのでサンプリング間隔は少ない方が音質が良いです。
今回は楽曲で使用する音ですし、音質にこだわりたかったためSample Everyは1 semi、つまり補完なしの全鍵サンプリングです。
サスティン時間
Sustinでサスティン時間の設定をします。
シンセサイザーを使える方はわかると思いますが、音が減衰しきった時の持続音をサスティンと言います。
サスティンになるまでの時間=これ以上鳴らし続けても音が変化しない時間を指定します。
今回は減衰してすぐに音が聞こえなくなる音色なので、5.5secとしました。
ベロシティレイヤー数
Velocity Layersでベロシティレイヤー数を設定します。
1つの鍵盤に対して何パターンのベロシティでサンプリングするかを決められます。
ベロシティで著しく音色が変わるような音色は多めに設定しておくといいと思います。
今回はベロシティによる音色変化は薄い音だったので少なめの3にしてます。
ベロシティカーブ
Velocity Responseでベロシティカーブを選択します。
128段階のベロシティをベロシティレイヤー数で分割した時、どこを細かくサンプリングするかという設定です。
Logにすると高域が細かく、Expにすると低域が細かくなります。Linerは等分割です。
海外で具体的な数値をまとめている方がいました。
Sampling Synths with Auto Sampler in MainStage 3 | BRIANLI.COM
今回は高域を細かくしたいのでLog2にしました。
ループ設定
Auto Loop、Auto Loop Start、Auto Loop Endでループ設定をします。
サンプラーでシンセ等の音色は鍵盤を押し続けても音が鳴り止まないですが、これは持続音をループしているためです。
Auto Loopにチェックを入れると、自動的にノイズが乗らないループポイントを作ってくれます。Auto Loop StartとAuto Loop Endで全サンプリング時間の何%〜何%のところをループさせるかを設定します。
今回は減衰して音が消える音色なのでループは設定しませんでした。
入力レベル調整
下部のInput Gainで入力レベルの調整ができます。
音をだしてみて、音量ゲージを見ながら音が割れない範囲に調整します。
5.サンプリングする
右下のSampleボタンでサンプリングをクリックします。
exsファイルの保存場所を聞かれるので音色名をつけてStartボタンをクリックします。
サンプリングが始まります。
設定によっては時間がかかるので待つか寝るかします。今回はお風呂に入ってきます。
6.EXS24で読み込む
Logic Pro Xを立ち上げてEXS24を起動します。
画面右上のエディットボタンをクリックし、インストゥルメントエディタを開きます。
上部の「インストゥルメント」→「開く」で作成したEXSファイルを読み込みます。
音がならない場合は一旦、別名で保存します。
~/Music/Audio Music Apps/Sampler instrumentsに保存するとexs24のサンプル選択メニューに出てきて次回から簡単に読み込めるのでオススメです。
インストゥルメンタルエディタを閉じて、EXS24の画面右下のリリースを調整します。
音を鳴らしながらちょうどいい具合に設定します。
自動でサンプリングできました
こんな感じでサンプリングできました。若干ベロシティの感度が変わったりはしてますが、かなり綺麗にサンプリングできてるんじゃないでしょうか。
これでアレンジ中にパパっと立ち上げて使えますね!
おわり
日本語でAuto Samplerの紹介をしている人が少なかったので書いてみました。というかあまり存在を知られてない…_?
因みにAlchemyでもEXS24のサンプルを読み込めますので使えます。音作りの素材にしてもいいかもですね。
使用頻度の多そうな音は積極的にサンプリングして効率化していきたいですね。
ということで、知っていたら便利なAutoSamplerでした。