ついに、NativeInstruments KOMPLETEの最新版、KOMPLETE 11が発表されましたね。
KOMPLETEとはNI社の音源やエフェクトが沢山入っている音楽制作統合パッケージです。根本的な音源強化として買う人が多いと思います。
初心者にもこれをお勧めするDTMerって結構多いんですよね。
先日、次のようなアンケートをとってみました。(たくさんのご協力ありがとうございました!)
DTM初心者が音のショボさに困っている!予算7万円程で勧める音源は…
— TiS@秋M3:G-24b (@tis_atisie) September 8, 2016
予想通りKOMPLETEがぶっちぎりで多いです。なんと、半数以上の方が単体音源やマルチ音源よりもKOMPLETEを勧めるということが判明しました。この時代にハード音源を勧める人が15%も居る方が驚きでしたが
しかし、多数の意見に反する答えで申し訳ないですが、僕はKOMPLETEは初心者が買うべきではないと思っているので、その理由を書いてみました。
初心者が買うべきではない5つの理由
その1 音源の数が膨大すぎる
KOMPLETE買ったけど音源の豊富さに心折れるありがちなパターン
— albel. (@albelt38) November 12, 2014
新発売のKOMPLETE11の公式ページには次のような謳い文句があります。
45製品、13,000以上のサウンド、155 GBにも及ぶインストゥルメントとエフェクト
昔はRPGの広告なんかにもボリュームを強調するコピーが多く使われてましたね。
一見ボリュームが多い事は良いことばかりのようにも思えますが、ボリューム=消費される時間でもある訳です。
音源/エフェクトを使う前提として「その音源/エフェクトの存在を知っている」必要があります。もっと言うと、「触ってみて音を出したことがある」くらいじゃないと楽曲制作中に取り出して使うのは難しいと思います。
KOMPLETEに収録されている全ての音源/エフェクトに触れるには滅茶苦茶時間がかかります。
さらに初心者は他社の音源に触れた経験が少ない=音源操作に対しての勘が乏しいと思います。つまり、音を選ぶだけの操作でもなかなかたどり着けなかったり、調べながらの作業になるので時間がかかってしまいます。
初心者が高いクオリティの楽曲を制作できるようになるにあたって、音源強化以外にもやるべきことは沢山あります。この時期に効率の悪い時間の消費はするべきではないです。音源だけ触りまくってても、打ち込まなきゃいつまでたっても曲は完成しませんよ。
しかも、時間をかけて膨大な数の音源に触ってみても、次項の理由により使う音は一部だけになってしまいます…。
その2 癖がある音が多い
しかしIKのKOMPLETEちゃ音色は膨大な数あるけど”使える音”が少ないなぁ。その点YとかRのハードシンセの方が厳選された音色が揃ってて使い安いわ。
— イチタクさん (@Takuma_Ichikawa) July 21, 2014
KOMPLETEは癖がある音が多いように感じます。これは単なる感想とも言えますが、そう感じている方は多いと思います。
KOMPLETE10Uのドラム、種類いっぱいあるわりにこれだってやつがイマイチない
— Yamajet (@Yamajet) September 8, 2016
これは、楽曲制作中に「こんな音が欲しいな~」と膨大な音の中から探し当てても、想像していた音と大きくずれていることが多いということです。
どう癖があるのかは音源によっても異なるのですが、
- 音が安っぽい
- くぐもっている
- 特定の帯域や成分が出すぎている
- 他のオケにまざりにくい
といった具合です。シンセのプリセットより生系の音色がそういう傾向にあります。
勿論、「使える音」というものも沢山ありますが、収録音色数が膨大なためその割合が低いように思います。
癖のある音も適格なシンセエディットやエフェクト処理ができれば改善します、またアイデア次第では使いようはあるのですが、やはり初心者には難しいですよね。
また、シネマティック音源や超マイナーな楽器など、制作ジャンルによっては一度も使用しないであろう癖の強い音源も沢山あります。
よく、「KOMPLETE買ったら音源に困ることはない!」と仰る人が居ますが、少なくともポップスやロック系の場合は「使える音」が少なくて正直これだけでは普通に困りますよ。
因みに制作ジャンルはEDM系か劇伴系に特化しているかなと思います。これらのジャンル作る人は購入優先度ちょっと上げてもいいかも。
その3 音源の系統が複雑
KOMPLETEの音源は他社の製品に比べて音源の系統が複雑な面があります。
あとRAZORとかKONTOURとかROUNDSとかシンセどこにあるんだ?と思ったらREAKTORの中だったのね
— 高瀬 (@takase_magpass) October 6, 2014
例えば、僕がストリングス音源で最も使用している、SessionStringsProはKONTAKTのライブラリの一つですし、
独特なサウンドかつプリセットが使いやすいシンセのRazorはReaktor上で動作します。
これらはKOMPLETE持ってる人には当たり前のことですが、初めての人はこれが意外と分からないんじゃないかと思います。
これらにアクセスするにはgoogleで調べるかマニュアルを読む必要があります。
調べる癖のない人、説明書を読まずにゲームを始めようとするような人は、下手すると買っても一生たどり着けずに存在すら知らない音源がある…という状況になるかもしれませんね。
その4 シンセはプリセットだけでは不十分
8ヶ月前komplete 10を買ったけどさっきまで使わなかった
どうして凄いDTMer全部これで凄い音を作れるけど私作ったうやつはくそみたいどうして~~~難しい~~~ pic.twitter.com/WXcKftWPzO— 薛南@インターネットカラオケマン (@setsunann_2525) September 19, 2015
KOMPLETEのシンセは生音より使えると思うことが多いし、実際の使用頻度も高いですが大きな落とし穴があります。
KOMPLETEを買う理由の一つとして、「リスペクトするアーティストがMassiveやFM8等のシンセを使っているから。」という人は少なくないと思います。しかし、購入直後にあなたの想像していたサウンドが鳴ってくれるかというと、そんなことはありません。
クラブミュージックをメインに作っている人が満足できるような音を鳴らすには別途プリセットを買う、または自分でシンセをエディットして音を作りこむ必要があります。
シンセ勉強しようと意気込むのもいいですが、KOMPLETEのシンセはUIの癖が強いので最初は他社のシンセを買った方がいいと思います。
Komplete 10買うよりsylenth1買ったほうがいいかも
初心者が手を出すものじゃないと思う— ひっこ (@HIKKO624) May 21, 2015
また、最近はDAW付属のシンセも高性能になってます。そのサウンド、本当にDAW付属のシンセでは作れませんか?ワブルベースくらいES2でも作れますよ。
「How to make (音色名)(シンセ名)」とかでググってみましょう。
その5 なんだかんだで高い買い物だ
komplete買うのはやめよう
安いとは言っても、高い— 架空のひと (@Konjac_Zerry) July 22, 2016
DTMにおいて初期のお金の使い方はとても大切だと考えています。お金に余裕がありまくって困ってる富豪さんならいいですが、大抵の人はそうもいかないですよね。
KOMPLETE11の値段を見ると次のようになってます。
- KOMPLETE 11 SELECT ¥24,800
- KOMPLETE 11 ¥69,800
- KOMPLETE 11 ¥139,800
パッケージの内容から見ればめちゃくちゃ安いですが、使える音源が何%かな…と考えるとKOMPLETEは後回しにして確実に使える他の単体音源やマルチ音源を買った方が有益なんじゃないかなぁと思います。
記事を書いてて初めて知ったんですが、今回からSELECTってバージョンがあるんですね。でも肝心なKONTAKTがKONTAKT PLAYERだし、Batteryも入ってないし微妙な印象…。
自分はどうだったのか
僕はというと、2013年2月にセールでKOMPLETE8を購入し、
コンプリさんいらっしゃった pic.twitter.com/DqQdf3xv
— TiS@秋M3:G-24b (@tis_atisie) February 3, 2013
その年末にバージョンアップ&上位版であるKOMPLETE 9 ULTIMATEを購入しました。
きましたアルティメット pic.twitter.com/dIsAQ30syx
— TiS@秋M3:G-24b (@tis_atisie) December 1, 2013
散財してたなぁあの頃は…。
この頃、僕のDTM活動はどういう状況だったのかというと、同人CDをリリースしてちょこちょこ売れたり、小規模BMSイベントで優勝するなど結果が出てきた時期でした。
つまり、楽曲制作に必要最低限な音源は持っていて、スキル的にも既に初心者は脱した頃だったと思います。
その後は制作してきた楽曲の殆どにNI音源を使用してきたので、結果的にKOMPLETEを買って正解だったと思っています。次回のバージョンアップぐらいで最新版購入してもいいかなとも思っています。
なぜ使いこなせたのか
なぜ初心者を脱した僕がKOMPLETEを買って使いこなせたかというと、
- 音源操作に慣れているので欲しい音に素早くたどり着ける
- 最低限必要な音源は持っているので「使える音」だけが生きてくる
- 分からなければ調べる癖が付いている
- シンセサイザーを扱うことができる
と、培ってきたスキルと資産で殆どの問題点を相殺できたからなんですよね。
現在も100%の楽曲で使用しているのはBatteryくらいのものですが、「あ、ここにはあの音源がハマりそうだな」という場面ではバッチリ使用することができています。
じゃあ初心者はどんな音源を買うべきか
僕が使っているもの中心に、カテゴリごとに初心者にオススメな音源を挙げてみます。
単体音源
特定の楽器に特化した音源です。
「使える音を追求する」という意味では単体音源が最強です。
Addictive Drums2
ヒットボカロ曲なんかでもよく聞くドラム音源です。
XLN AUDIO ( エックスエルエヌオーディオ ) / Addictive Drums2
ドラム音源というとこれとBFD3が有名ですね。
FXPANSION ( エフエックスパンション ) / BFD3 ダウンロード版
MusicLab Realシリーズ
Music Labから出ているギターの単体音源シリーズです。僕もRealStratを使ってますが、非常にリアルなギターが打ち込めますよ。
MUSIC LAB ( ミュージックラボ ) / REAL STRAT 4
MUSIC LAB ( ミュージックラボ ) / REAL LPC 3
MUSIC LAB ( ミュージックラボ ) / REAL GUITAR 4 / BOX
MUSIC LAB ( ミュージックラボ ) / REAL EIGHT
ギター音源はV-Metalも有名ですね。
特にギター音源はDAW付属のものでは心もとないので、一つは持っていた方がいいかもしれません。
単体シンセ
音を波形から合成することのできる音源です。
NIのシンセは操作も音も、良くも悪くも癖が強いです。スタンダードなVAシンセから触ることをオススメします。
LennarDigital Sylenth1
波形沢山重ねて分厚い音を作りたいならこれ。僕の一番使用率の高いシンセです。
信号のフローが分かりやすいインターフェースなのでシンセの使い方覚えるのにも最適だと思います。
discoDSP Discovery Pro
ベーシックなVAの音を出したいならこれ。NordLeadモチーフなシンセサイザーです。
Arturia V Collection 4
アナログ/ビンテージ系な音を使いたいならこれ。伝説の名機が沢山入ってます。
ARTURIA ソフトウェア シンセサイザー V COLLECTION 4
昔無料で配布してたMINI V(Minimoogのソフト版)だけ使ってますが、ぶっといアナログサウンドが出ますよ。ロックなんかにも使えます。
マルチ音源
マルチ音源はスタンダードな「使える音」が沢山入っているのでひとつは欲しいです。
STAINBERG HALion 5
CubaseでおなじみのStainberg製の定番マルチ音源です。
STEINBERG ( スタインバーグ ) / HALion 5
IK Multimedia SampleTank3
最近十数年ぶりのバージョンアップをした定番マルチ音源その2。僕も今ちょっと欲しい。
IK MULTIMEDIA ( アイケーマルチメディア ) / Sample Tank 3
reFX Nexus2
シンセ系ならこちら。即使えるシンセ音が沢山入ってます。
よくMassive、Sylenth1と並べて定番ソフトシンセのように扱われますが、出来上がった音を鳴らすタイプの音源なのでマルチ系にカテゴライズしました。
エキスパンションで欲しい音を後から追加できるのも魅力的。
正直言うと出音は好きじゃないけど、初心者にはその手軽さと音のクオリティからかなりオススメできる音源です。
KORG Legacy Collection : M1
古めのPCM系シンセの音が欲しいならこちら。名器KORG M1のソフト版です。
古いクラブミュージック、ポップスやゲームミュージックにも合いそうです。
KORG Legacy Collection : M1 ソフトウェア・シンセサイザー
PCM系は最近出たSOUND Canvas VAもオススメです。 Roland SC88Proという名器のソフト版です。
Roland – Sound Canvas VA | Software Synthesizer
おわり
何故かDAWを知らないような初心者でもKOMPLETEは知ってるんですよね…広告打ちまくってるからかな。
結果的にKOMPLETEをdisりまくってるような記事になってしまいましたが、別にKOMPLETEが嫌いな訳ではないですよ。
ドラムがめちゃ組みやすくなるBattery、リッチなFMサウンドが出るFM8、デジタル臭さが武器になるMassive、多彩なアーティキュレーションを持つSessionStringPro、等がなければ完成しなかった曲がいくつもあるのは確かです。
ただ、人によっては順番としては後回しにしてもいい商品なんじゃないかと思っていたので書かせて貰いました。
本当に必要なものは自分の作りたい音楽によって十人十色で変わってくるものです。自分の頭で考え、十分調べてから本当に自分に必要なのかを判断することが大切だと思います。
Native Instruments ( ネイティブインストゥルメンツ ) / KOMPLETE 11 SELECT
Native Instruments ( ネイティブインストゥルメンツ ) / KOMPLETE 11
Native Instruments ( ネイティブインストゥルメンツ ) / KOMPLETE 11 ULTIMATE
コメント
[…] DTM初心者のあなたがNI KOMPLETEを買うべきではない5つの理由 […]
初心者が何を作りたいかによってすすめる音源は違ってくると思いますが、予算7万円ならQLSO Goldが2つ買えると思います。
でも、多くの初心者は、音質よりも音楽理論のほうが欠けていて、習得に年数がかかると思います。
そのうちは無料の音源でいじって慣れたほうが良いと思います。