歌モノ制作したいという方を対象にノウハウを紹介してみるシリーズ記事です。
第2回目の今回は「ボーカル起用編」ということで、ボーカルさんを探したり、依頼する上で僕がやっていること、気を付けていることなどを書いていこうと思います。
目次
歌い手?ボーカル?
いきなり余談ですが、僕は歌唱を担当する方を「ボーカルさん」と呼んでいます。
他にも、
- 歌手
- 歌い手
- ボーカリスト
など、色々呼び方はあると思います。
元々は全て同じ意味なんでしょうが、世間一般的…というかネットの世界では、
歌手 = プロ、
歌い手 = アマチュア(特にニコニコ動画文化圏の)
という感覚を共有していると思います。
最近、商業の仕事もやったりしましたが、僕のメインフィールドは今後も同人音楽だと思うので「歌手」とは言い辛く、
またニコニコ動画に造詣が深い訳でもないので「歌い手」も違う。
となると汎用的なボーカルorボーカリストですが、短く言いやすい「ボーカル」を選びました。
そして、最大のリスペクトを持ってこの記事では「ボーカルさん」で統一させて貰います。
はい、結構どうでもいい話でしたね。
ボーカルさんを探してみる
歌モノを作ったことのない方から
- 「知り合いのボーカルさんが居ない」
- 「どうやって探せばいいか分からない」
などの声を聞いたことがあります。
歌モノの敷居が高く思われている要因の一つかもしれません。
しかし、ポイントさえ押さえれば、ボーカルさんに自分の曲を歌ってもらうのはそれほど難しいことではないと思います。
妥協策でボーカロイドを使っているという話もよく聞きますが、いつも「楽曲が勿体ないなぁ」と思います…。
ボーカルさんに求める要素
カラオケ板、歌ってみた動画、同人音楽などの登場で、ネット上でボーカル活動をする方は増えました。
お蔭で、かなりボーカルさんとつながりやすい世の中になっているとは思います。
が、ボーカルさんに求められる条件は案外厳しいです。
- 音程、ピッチ等の技術力
- 声質、歌い方と自分の楽曲の調和度
- 十分なコミュニケーションをとれ、トラブルを起こさない人間性
上記の要素は一つでも欠けていたら、楽曲クオリティの低下や制作の停滞につながります。
ボーカルさんを探す際にはこれらの要素を意識し、できるだけ妥協なしで探したいです。
分母は多くなってもこれらの条件を満たす人は少ないと思います。どの分野でも信頼できる人を見つけるというのは難しいことですね。
ネット上での制作では、締切を破る、リテイク対応しない、逃げる等の所謂「地雷」に遭遇する確率は結構高いようです。(僕はそういう経験あまりないです。)
トラブルを回避するためにも、共同制作者を探す際には信頼できる人を慎重に選びましょう。
どこで探すか
オススメ順に紹介しますね。
知り合いからの紹介
持つべきものは友達。一番堅実な方法です。
いくらSNS等で文章は読めても、いざ共同制作をするとなったときの人間性をはかることは困難です。
その点、知り合いとの実績がある人は信頼度が高いですし、どんな人なのか聞くことだってできます。
なんらかのコミュニティに属している場合、周りとの関係もあるため責任のない行動はとられにくいです。
また、ミックスの際に補正を施せる現代では、音源だけを聴いてボーカルの技術力を正確に計ることは難しいです。
ですが、技術的な面も事前に情報を得た上で採用を決めることができます。
実際、長い付き合いのボーカルさんたちは知り合いから紹介された方が多いです。
過去に聞いた作品から探す
過去に聞いた曲で気に入ったボーカルさんに依頼してみるのもオススメです。
気に入ったボーカルさんなら技術的な面での不安は少ないし、制作実績もあるので信頼度も高いと思います。
思い切って憧れのあの人に依頼してみるのもアリ!
投稿型サイトで探す
知り合いからの紹介や自分が知っているボーカルさんからでは見つからない場合、投稿型サイトでイチから探すのも手だと思います。
ただ、投稿型サイトのユーザー傾向として本格的な共同制作に慣れていない方や未成年の方も多いです。
Twitter、Blog等で本人の文章が読める場合は読んでみて、慎重に見極める必要があると思います。
SNSで募集する
実は一番危険かもしれません。よくトラブルの話を耳にします。
募集側の知名度や企画内容にも寄りますが、どこの誰とも分からない人間がくる可能性が高いです。募集要項を読んでなかったり…。
「募集でなければならない意味」がある場合以外はなるべく避けた方が良いと思います。
もし募集でボーカルさんを探す場合は、決して妥協で選んだりせず再募集や別の方法を考えた方が良いと思います。
歌唱依頼する
ボーカルさんが見つかったらいよいよ歌唱依頼をしてみましょう。
昨今ではTwitterのDMとかでやりとりすることも多くなってきましたが、基本はやはりメールです。
ビジネスメールマナーを守り、相手に敬意を持って依頼を出しましょう。
以下に「初めてのボーカルさんに送る依頼メール」を想定して例文を書いてみました。
件名:楽曲の歌唱依頼について
本文:○○○様
はじめまして。Cineraria StudioのTiSと申します。
突然のご連絡失礼いたします。
××で○○を拝聴させて頂きまして、○○○様を知りました。…①
伸びがありオケの中に埋もれない歌声、とても素晴らしいと思います。
さて、今回は歌唱のご依頼させて頂きたく、ご連絡を差し上げました。
依頼の概要は下記の通りです。
【楽曲の使用用途】…②
MM月DD日に開催される△△△にて頒布のオリジナルアルバムに収録予定。
価格はXXX円、生産数は○○○枚を予定しています。
企画書を添付致しますのでご確認ください。
【作業範囲】…③
1曲のリードボーカル及びハモリの収録。
曲の長さは約4分(2コーラス+大サビ)。
曲調は明るめの四つ打ちポップスです。
リード×2テイク、上ハモリ×2テイク、下ハモリ×2テイクの6テイクの収録をお願いします。
【提出フォーマット】…④
wav 16bit 44.1khz
音割れしないように気を付けて下さい。
【締切】…⑤
ボーカル提出:MM月DD日23:59迄
【報酬】…⑥
○○○○○円
銀行振り込み可能です。
以上です。
依頼の内容で分からないことが御座いましたらお気軽にご質問ください。
大変恐縮ですが受託の可否を○月○日までにご返信頂けますでしょうか。…⑦
ご多忙の中、お手数をお掛けしますがよろしくお願い致します。
僕もあまり文章に自信はないのですが、失礼はないようにしています…。
(仲良くなったらここまで畏まる必要はないと思います。)
必要なことは最初のメールで伝える
相手にとっても自分がどんな人かは分からないので、安易に依頼を受けるのはリスキーです。
受託の可否の判断材料は依頼の内容しかありません。
また、質問と回答をメールで繰り返すのは双方にとって面倒です。
最初のメールで必要な情報は伝えるようにしましょう。
細かく見ていきます。
①どこで知ったか、歌に対する感想等
××で○○を拝聴させて頂きまして、○○○様を知りました。…①
伸びがありオケの中に埋もれない歌声、とても素晴らしいと思います。
これは絶対に必要という訳ではないですが、誰でも良い訳ではなくしっかり選んで依頼しているということを伝えられます。
誰かの紹介の場合、紹介者の名前を出すのも良いでしょう。
歌の感想を自分の言葉で伝えられると相手にも喜ばれて尚良いと思います。
②楽曲の使用用途
【楽曲の使用用途】…②
MM月DD日に開催される△△△にて頒布のオリジナルアルバムに収録予定。
価格はXXX円、生産数は○○○枚を予定しています。
企画書を添付致しますのでご確認ください。
これ以降はCineraria Studioの楽曲依頼ページに書いてあるのと大体同じです。
楽曲を何に使うのか明確にしておきましょう。企画書がある場合は添付すると良いです。
CDの場合、価格や生産数は任意だと思いますが、報酬が妥当なものだと説明するのに説得力が出せます。
クローズドのコンペ等の場合、依頼を受けていない段階で詳細な使用用途を伝えられないこともあると思います。
その場合も理由を説明して、受けてから詳細な使用用途を提示する旨を書きましょう。
③作業範囲
【作業範囲】…③
1曲のリードボーカル及びハモリの収録。
曲の長さは約4分(2コーラス+大サビ)。
曲調は明るめの四つ打ちポップスです。
リード×2テイク、上ハモリ×2テイク、下ハモリ×2テイクの6テイクの収録をお願いします。
担当して貰う作業範囲を記述しましょう。
曲の雰囲気や長さや構成が決まっている場合は伝えた方が丁寧です。
④提出フォーマット
【提出フォーマット】…④
wav 16bit 44.1khz
音割れしないように気を付けて下さい。
ボーカルさんが迷わないように、フォーマットを指定しましょう。
⑤締切
【締切】…⑤
ボーカル提出:MM月DD日23:59迄
締切を提示しましょう。
(なるべくマージンをとって締切を決めたほうがいいです。)
⑥報酬
【報酬】…⑥
○○○○○円
銀行振り込み可能です。
後のトラブルを避けるためにも報酬の話は最初にきちんとしておきましょう。
支払方法についても書いておくと丁寧です。
報酬額が難しいところなのですが、同人音楽の場合は相場といったものは無いに等しいと思います。
僕は見込める売上額と相手に使わせる時間を考慮して妥当な報酬額を決めています。
⑦返信締切
大変恐縮ですが受託の可否を○月○日までにご返信頂けますでしょうか。…⑦
必須ではないかもしれないですが、返信締切を設けておくと待ちぼうけ状態を防げます。
人によって項目の内容は違うかもしれませんが、 僕はこんな感じで依頼を出しています。
結構書くことは多いですが、ボカロを実用レベルで打ち込むよりかは楽だと思います。
あとは返事が来るのを待つだけ…。
何も反応が無ければ追い打ちメールや、不達の場合もあるので別の手段で連絡をとってみるといいかもしれません。
コメント
詳しくてわかりやすいです。歌モノ挑戦してみたくなりました!
今後も良質な記事を期待してます!
ありがとうございます!
時間があるときの更新になってしまいますが、
じわじわっと更新していきたいと思います(^ ^)